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先輩たちの声
Tutorialを大切にしたPhD Course

能登原 祥之【平成20年度入学】

平成20年度入学

私は、社会人特別選抜で博士課程後期に入学しました。現在、職場で働きつつ、週1回本学大学院に通っています。現在の研究の興味は、(1) コンコーダンスを利用した語学学習、(2) 学習者コーパス研究、(3) 動詞パタン研究、の3つの分野です。

社会人入学までの準備
私の場合、大学院を卒業後、高等専門学校、私立大学、と教育現場に10年近く携わってきました。毎日が”発見”と”格闘”でした。そのような日頃の経験から現在の研究テーマが浮かび上がってきました。そこで、博士課程後期に進学することを決意しました。
国内外には、英語教育学や応用言語学を深めていくことができる大学院は数多くあります。その中でも、私は本学大学院を選択しました。その理由として、伝統ある「英語教育学」の学風と研究姿勢を学べる上に、以下3点をバランス良く学べることが選択理由として挙げられます。
1 英語学(特にコーパス言語学、認知言語学、英語発達史)からの助言が頂けること
2 教育内容(特に英語の動詞パタン)を再考することから英語教育を問い直せること
3 量的研究のみならず質的研究に関する研究姿勢について助言が頂けること

Tutorialを大切にした PhD Course
博士課程の学生は”自主性”が重んじられあまり指導されないのが通例です。ところが、本学大学院は違います。毎週授業に参加し発表しなければなりません。授業は2種類。一つは、修士の方々とのSeminarの授業。もう一つは、博士だけのTutorialの授業です。
修士の授業では、各分野の先生が全員出席されますので、英語教育学だけでなく、英語学、英文学、の視点からの助言も頂くことができます。このゼミの環境が自分の裾野を広げていると思っています。専門の殻に閉じこもっていることは許されません。
博士の授業は、毎回「雑談」から入ります。日常の出来事、本、映画、音楽、美術、そして、人など。このような Witty な雑談においてもどんどんと意見が求められます。教養と感性、そして洞察力が常に問われていきます。
「雑談」の後が「発表と質疑応答」です。この授業では「文字にしていくこと」が重視されます。毎週レジュメを作成し、先生方の前で研究の進捗状況を発表します。発表が終わった後、研究内容から発表の仕方に至るまで数時間かけてどんどん詰問されていきます。発表者は質問に必死で答えていきます。自分の立場や意見を明確に持っていないとその場に座っていられません。参加者が満足するまで議論が続きます。このように、”気がすむまで言い合う“ Tutorial の授業が終了すると、もう外は真っ暗。本務校の学生や授業のことを頭に思い浮かべながら「もう一つの現実」に戻っていきます。
定期的に行われるTutorial の授業はイギリスの大学院では通例ですが、忙しさにかまけて、日本ではなかなか定着しないのが実情です。その意味では、本学のPhD Course は貴重だと思っています。本授業を通して「自分の殻」を破り、広い視野から知恵と勇気をいただきつつ、英語教育学の研究者として少しでも成長できるよう日々精進したいと思っています。(2009年6月執筆)